連載 DX × ITガバナンス| 第1回 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?|横浜市|コンサルティング

DX × IT Governance

連載 DX × ITガバナンス

第1回 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?


今、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めています。

様々な記事やセミナーで「DXとは企業が避けて通ることのできないデジタル技術による業務やビジネスの変革」と多いと思います。しかし、「具体的にDXとは何を表しているのか」、また、「なぜDXがここまで注目を集めているのか」が明確になっていない方も多いのではないでしょうか?

この連載では、DXとは何なのか、また、なぜここまで注目を集めているのかを解説します。

 


目次

  1. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?
  2. DXが進む背景
  3. 今なぜDXが注目されているのか?
  4. まとめ

 


1. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?

DXはスウェーデンの学者が提唱

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。これは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したことがきっかけとされています。トルターマン教授は「ITの進化により、人間の生活は社会全体でより良いものに変化する」と述べ、以下の特徴を提示しています。

・DXの進展により、情報技術と現実社会の融合により変化が発生する
・DXが現実社会の素材となる
・情報システム研究者の課題として、研究へのアプローチや方法論を研究する必要がある

ちなみに、「Digital Transformation」の略語は「DT」ではなく、「DX」となっています。これは、英語圏では「Trans」を「X」と表記することが一般的です。このため、それに基づいて表記しているため、「DT」ではなく「DX」となっています。

ただ、トルターマン教授は「社会全体でより良いものに変化する」と述べているように、それは社会全体を変えるインパクトを表しています。このため、アメリカのハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・M・クリステンセンが提示した「破壊的イノベーション」に近いでしょう。

2018年に経済産業省が定義

日本国内では、経済産業省がDX推進を目的として2018年12月にまとめた「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(引用元:「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」より)

この定義では、「データとデジタル技術を活用して製品、サービス、ビジネスモデルの変革を行わなければ、競争から取り残される」ことを意味しています。

このガイドラインでは、経済産業省は「覚悟を持って各企業は企業文化や風土の変革を覚悟してDXの推進に取り組むべき」こと、そして、その方法論を提示しています。

2. DXが進む背景

では、DXが進む背景には何があるのでしょうか?ここでは、以下の2つの要因について説明します。

IT基盤の変化

1つ目は「IT基盤の変化」です。

21世紀以降、以下のIT基盤の進展は、私たちの生活を大きく変えるものとなりました。

・クラウド
・ビッグデータアナリティクス
・ソーシャルメディア
・モバイル端末

特にクラウドの進展により、ひと昔は導入には人材の確保やコストがかかり、実現が難しかった様々なテクノロジーを簡単に利用できるようになりました。例えば、大規模サーバーやストレージの利用、AIなどの技術利用などです。これらを自前でコンピューターを用意し、システムを構築することができたのは、大規模投資が可能なごく一部の企業のみでした。しかし、現在ではAIを利用できるクラウドサービスも登場しています。その中には、AIの知識がない担当者であっても簡単に設定できるものもあります。このように、クラウドの進展がシステム構築の敷居を下げ、小さな企業でも仕事の進め方を変えるようなサービスを生み出す土壌が生まれたのです。

また、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末の進展も仕事や生活を大きく変える要因の1つとなりました。例えば、電車の中でのニュースなどの情報の取得やソーシャルメディアを使ったコミュニケーション、スマートフォンやタブレットを使った電子書籍の読書などです。また、仕事上の連絡やメールのやり取りなどもスマートフォンやタブレットを使って行うことが多くなっています。

デジタル・ディスラプション

「デジタル・ディスラプション」とは、「新しいデジタル技術やビジネスモデルの登場により、これまでの製品やサービスの価値に変化が発生する」という意味の言葉です。

その例の1つがGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の登場です。これらの4社の登場により、生活スタイルが一変しました。また、Amazonによる3,000基の衛星を使って地球上をカバーした携帯サービス提供の計画など、4社の技術革新により、今後の生活が一変する可能性もあります。

最近の例では、コロナ禍がきっかけとなった様々な変化です。デジタル技術を活用した新しい生活スタイルが生まれています。その一つが「テレワーク」です。新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、ネットワークを通じて会社のシステムにアクセスし、仕事を進めるようになりました。ミーティングはZoomやGoogle Meetを使って行えば、距離が離れていたとしても問題なく行うことができます。オフィス賃料の削減や通勤手当の廃止など、企業もメリットを感じているようです。このため、テレワークの導入企業は一層進むでしょう。

また、コロナ禍は、展示会の開催や商談の進め方にも変化が発生しています。展示会はオンラインでの開催が多く行われるようになっています。また、オンラインによる名刺交換など、商談もオンライン化が進むものと考えられています。

テレワークやオンライン展示会、オンライン商談を可能としたのは、クラウドによるテクノロジーと、オンライン会議システムなどのクラウドサービスです。

このように、新たなデジタル技術やビジネスモデルの登場により、これまでの製品やサービスの変化が発生する「デジタル・ディスラプション」が背景にあります。

3. 今なぜDXが注目されているのか?

では、今なぜDXが注目されているのでしょうか?そのきっかけとなったのが経済産業省のまとめた報告書の中で明らかになった「2025年の崖」です。

経済産業省が警告する「2025年の崖」

「2025年の崖」とは、経済産業省がまとめた報告書「「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」の中で明らかにされた内容です。多くの関係者がこの内容に衝撃を受けたとされ、注目を集めるきっかけとなりました。

その内容を簡単に紹介すると、以下の通りです。

・2025年に21年以上稼働する老朽化したシステムが全体の約6割を占めると予測される
・また、システムの老朽化と長年多くのプログラム修正に伴い、システムが複雑となり、誰も内容がわからないブラックボックス化を引き起こしている
・一方、経営者は「システムは動けば大きな問題にならない」と考えており、経営課題として正面からシステム刷新に取り組んでいない
・このため、老朽化したシステムに顧客が求めるサービスを取り組むことが難しくなり、DXの進展を阻害する
・2025年までにシステムを刷新しないと、それ以降に年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性がある。

このように、経済産業省は同レポートで「老朽化したシステムを刷新してDXを進める必要がある。刷新に遅れた企業は社会の変化に取り残され、事業機会を失う可能性がある」と警鐘を鳴らしているのです。

4. まとめ

今回は「DXとは何か?」について解説しました。

DXとは「デジタル技術の進展が社会や人々の生活をより豊かにする」というエリック・ストルターマン教授が提唱した概念です。また、経済産業省は2018年に「データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、業務、組織、プロセス、企業文化・風土の変革により優位性を確立すること」と定義しました。

また、DX進展の背景には、IT基盤の変化とGAFA登場などによるデジタル・ディスラプションがあります。

一方、日本国内を見ると、経済産業省が「2025年の崖」が警鐘を鳴らすなど、DX進展に対する危機感が叫ばれています。

では、DXは中小企業にどのようなインパクトをもたらすのでしょうか?これについては次回に解説します。

 


 

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